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研究所紹介

所長挨拶

 人類はこれまで多くの伝染病にさらされてきたことは間違いありません。 5月の端午の節句の菖蒲湯や7月の京都の祇園祭は疫病除けのために始められたのです。 歴史上最大の伝染病は天然痘でしょう。 1796年に天然痘には雌牛のかさぶたの接種が予防に有効とわかり、ワクチン(vaccine)の語源となりました。 ラテン語の vacca とは雌牛で、vaccina とは牛痘というウシにかさぶたを起こす伝染病です。 このワクチンが開発されて100年以上のちに、これは弱毒ウイルスを接種していることがわかりました。 ワクチン開発やウイルスに対する治療薬の開発という科学技術の発展により、これまで多くの命が救われてきました。 そして、ヒトの天然痘やウシの牛痘という病気も地球上から駆逐されました。 ところが現代社会はすでに伝染病を克服できたと考えてしまったのは、人類のあさはかさでした。 1981年に ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)、1983年にエイズウイルス(HIV)、2003年に SARSウイルス、2009年には新種のインフルエンザウイルス、2012年に MERSウイルスが突然出現し、その伝染率が少なくないことより社会への危機が問われました。 今後も新種のウイルス出現は予想されており、それに対する準備・対策が必要です。

 本研究所は1956年に「ウイルスの探究並びにウイルス病の予防及び治療に関する学理及びその応用の研究」を目的に設立されました。 ウイルスは、ウイルス核酸( DNAあるいはRNA )とそれを包み込むウイルス蛋白質から構成された小さな目に見えない粒子です。 細胞に感染して(乗り移って)、細胞内でウイルス核酸を複製し、子孫を増やす利己的な生命体です。 すなわち、細胞ならびに生体のシステムをうまく利用する生体分子複合体です。 ウイルス研究所はこの生体システムの解明を至上命令として、基礎・基盤研究に挑んできました。 その成果として、まず細胞ならびに生体の包括的事象の解明があります。 すなわち、細胞内の遺伝子・蛋白質合成システム、ウイルス複製を抑えるインターフェロンの発現誘導システム、病原体からの防御反応を支える血球免疫システム、高次機能である中枢神経組織の構成と維持システムなどに関する研究成果です。 さらに、具体的なウイルスそのものに関する成果として、日本に100万人以上の感染者がいる HTLV を世界に先駆け見いだしました。 ヒトの発がんレトロウイルスとしてはじめてのものでした。 同じレトロウイルスである HIV については分子機序の解明、薬剤開発、動物モデルの開発、動物のレトロウイルスについては内在化した遺伝子の機能解明、RNA ウイルスについてはヒトゲノムにも組み込まれていたボルナウイルスや肝炎を起こす C型肝炎ウイルスに関する先駆的な研究成果を送り出しています。

 これらの独自の研究活動に加えウイルス研究所は、平成22年度より全国共同利用・共同研究拠点「ウイルス感染症・生命科学先端融合的共同研究拠点」として、サル類 P3 感染実験、マウス P3 感染実験、ウイルス・生命科学研究を3つの柱として公募共同研究を行い、幅広い活動を行っております。

 現代社会では急速なグローバル化が進み、科学研究領域は日々進歩し、魅力的であると同時に気の抜けない状況になりました。 人知という財産を得るための科学研究ならびにその推進を担う人材の育成という役目をわれわれ大学研究所は担っています。 人類に貢献する研究組織としての使命を果たすべく、私どもは日々努力を続けています。みなさまのご支援をお願い申し上げます。

平成26年5月

ウイルス研究所所長
小柳 義夫

 

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