研究所紹介
所長挨拶
ウイルスは、自分自身では増えることができず必ず宿主細胞を必要とします。限られた遺伝子で複製するために、ウイルスが取った手段は宿主細胞を乗っ取るという方法です。宿主細胞の様々な仕組み、経路を巧妙に使い自分自身の複製・生存を図ります。このため、ウイルスを研究していくと必然的に細胞の基本的な機能に必須である仕組みを研究することになります。がん遺伝子、p53,様々な転写因子など、ウイルス研究から生み出された成果は枚挙に暇がありません。ウイルスと生物の間には、長い攻防の歴史があります。進化の過程で、生物はウイルスに対抗する手段を獲得し、さらにウイルスは、それを克服する策を身につけてきました。その攻防の歴史はゲノムの中に刻まれています。このウイルスと宿主の共進化は、興味深い研究テーマとなっています。
ウイルス研究所は「ウイルスの探究並びにウイルス病の予防及び治療に関する学理及びその応用の研究」を目的として1956年に設立されました。ウイルス研究所は、ウイルス研究と生命科学研究を2つの柱として研究を進め、成人T細胞白血病の原因ウイルスとの関連の同定、エイズウイルス研究に多くの成果を上げてきました。基礎生命科学の研究においても、その黎明期からバクテリア遺伝子発現制御やインターフェロンの研究で日本の分子生物学をリードし、現在に至るまで免疫学・発生学等も含め様々な分野で先端的な成果をあげております。ウイルスを研究するためには、細胞だけでなく個体レベルでの解析が欠かせません。ウイルス研究所では、マウスだけでなくサルを使った感染実験が可能な施設を有し、先端的な研究成果を上げると共に全国の研究者に開かれた共同研究・共同利用を提供しております。
ウイルス研究は生命科学の根本的な問題に迫るだけでなく、実際のウイルス感染症の克服にも不可欠です。1980年代に死に至る病として恐れられたエイズは、ウイルス研究に基づく多くの抗ウイルス薬の開発により制御可能な感染症へと変貌を遂げております。また、次々と人類社会に侵入する新興ウイルス感染症に対処するためにも基盤研究は欠かせません。是非、若い方々がウイルス研究所の研究活動に加わって頂き、ウイルス・生命科学研究の新たな力となってくれることを願って止みません。
ウイルス研究所は平成22年度より全国共同利用・共同研究拠点として承認され「ウイルス感染症・生命科学先端融合研究拠点」として活動しております。この拠点ではサル類P3感染実験、マウスP3感染実験、ウイルス・生命科学研究を3つの柱として共同研究を公募し、活発な研究活動を行っております。
現在、世界は経済、政治、社会の多方面に渡り益々、強く結びついています。サイエンスは最もボーダーがない領域であり、日本から世界へ向けた発信が求められています。ウイルス研究所は、次世代のウイルス・生命科学研究を牽引する研究成果を発信し続け、その担い手となる若手研究者を育成致します。皆様の更なるご支援をお願い申し上げます。
平成24年6月1日
ウイルス研究所所長
松岡 雅雄


研究所紹介